キッティングサービスの費用相場は?
サービス選びには注意点も!
2023年8月2日 | 2023年8月2日 更新
業務でPCを利用できるように必要な設定やアプリケーションのインストールをおこなう「キッティング」。必要な作業とはいえ、情報システム部門にとって負担が大きく、アウトソースを検討する企業が増えていますが、気になるのはその費用です。さらに、キッティングサービスを利用する際は、費用以外にも注意すべきポイントも。詳しく解説します。
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キッティングサービスとは
キッティングとは、PC導入時などにおこなう初期設定やセットアップのこと。OSの設定やセキュリティ対策ソフトのインストール・設定、業務に必要なアプリケーションのインストールなどをおこない、すぐに業務で利用できる状態にすることを指します。
キッティングは、新たにPCを購入した際だけではなく、OSの移行やWindowsアップデート(Windows 10以降で発生する大型アップデート)でも必要になるケースもあります。情報システム部門で一括対応する企業も多く、大量のPCをセットアップしなければならないため、「物理的にPCがたくさん届き、場所が足りない」「1台ずつ開梱して、設定するのに時間がかかる」と大きな負担となっていました。
こういった作業を代行するのが「キッティングサービス」で、様々な事業者がサービスを提供しています。
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キッティングサービスのメリット・デメリット
キッティングサービスのメリットは「社内で作業をする必要がなくなること」と「専門の事業者に任せられること」の2つと言えます。社内作業がなくなるため、場所や人手を確保する必要がなくなり、情報システム部門の負担を大幅に軽減できます。また、事業者では専用ツールなどを用いて作業することが多く、作業時間の短縮、作業ミス・漏れの防止といった効果を期待できる、というわけです。
一方、デメリットとしては、コストが変動することが挙げられます。キッティングサービスでは、作業内容などによって費用が変わるほか、ボリュームディスカウントがあるサービスもあり、台数が多いほど費用対効果が高まる傾向があり、固定費として想定しにくい側面があります。社内で作業する際の負担やコストを踏まえて、検討することをお勧めします。
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キッティングサービスの作業内容
事業者やサービスによって、請け負う作業の範囲は異なりますが、一般的な作業内容としては下記が挙げられます。
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①デバイスの確認
デバイスを開梱し、必要なものがそろっているかを確認するとともに、周辺機器を接続します。
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②初期設定(OSアップデート)
初期設定、必要に応じてOSアップデートまでおこないます。
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③ネットワーク設定
社内などのネットワークに接続するために必要な設定をおこないます。
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④プリンタなど周辺機器の設定
プリンタで印刷するための設定など、周辺機器の設定をおこないます。
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⑤業務アプリケーションのインストール・設定
必要に応じて、業務で利用するアプリケーションのインストールをおこないます。
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⑥セキュリティ対策の実施
自社のセキュリティポリシーに則った端末側の設定、アンチウイルス製品など必要なセキュリティ対策製品のインストール・設定などをおこないます。
キッティングサービスを利用する際には、事前に必要な作業や設定の内容を明確にした上で、依頼する形となります。当然ですが、インストールするアプリケーションや、セキュリティ設定の内容などは自分たちで判断するしかありません。また、任せる作業が増えるほど費用は高くなりますから、「何をしなければならないのか」「どこまで依頼したいのか」を検討しておきましょう。
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キッティングの手法
キッティングとひと言に言っても、様々な手法があり、規模や環境によって向き・不向きがあります。
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・都度キッティング
1台ずつ手作業でキッティングをおこなう方法です。事前準備が不要で、すぐに作業できるほか、複雑な設定にも対応しやすいことが特長です。端末台数が多くなるとミス・漏れのリスクが高まり、時間もかかるため、小規模での展開に適しています。
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・マスター展開(Wipe & Load)
PCのマスターイメージを作成し、PCにクリーンインストールすることで必要な設定などを一気に展開する手法です。これまでもOS展開に多く用いられてきました。大量の端末に短時間で適用でき、複雑な設定にも対応できる一方、Microsoft ボリュームライセンスが必要で、マスターイメージを作成しなければならないなど、事前準備に時間がかかる点は注意が必要です。
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・プロビジョニング
マスター展開とは異なり、Windows 10のOS自体はPCにプレインストールされたものをそのまま利用し、必要な設定やアプリケーションなどを「プロビジョニングパッケージ」として作成して、端末にこのパッケージを適用することで展開します。Windows 10で新たに提供されたもので、プロビジョニングパッケージの作成に高度なスキルは必要なく、比較的短期間で事前準備をできることがメリットです。しかし、1台ずつ展開しなければならないため、規模が大きくなると負担が大きくなります。
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・Windows Autopilot
クラウド経由でPCのセットアップを実現する「Windows Autopilot」を利用する方法もあります。インターネットに接続していればキッティングが可能であり、社員の手元での「ゼロタッチキッティング(ユーザ操作をなくした自動キッティング)」を実現できます。利用にはMicrosoft Azure ADとMicrosoft Intuneの環境が必須で、インストールできないアプリケーションもあること、ネットワークが不安定だと展開に失敗する可能性があることなどがデメリットとして挙げられます。
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・らくらくアップグレードツール
富士ソフトが独自開発したツールで、外部媒体を利用し、ネットワークに接続していない環境でのキッティングを実現します。複雑な設定にも対応し、品質を担保できる点がメリットです。「キッティング時に1台ずつネットワークに接続するだけの環境を用意できない」といったケースにお勧めです。
規模 | 展開 コスト |
期間 | 複数機種 対応 |
複雑性 | 品質 | 推奨されるケース | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
都度キッティング (手作業) |
× | ○ | × | ○ | ○ | × |
|
マスター展開 (Wipe & Load) |
○ | × | ○ | × | ○ | ○ |
|
プロビジョニング | △ | ○ | × | ○ | × | ○ |
|
Windows Autopilot |
○ | △ | ○ | ○ | △ | ○ (※) |
|
らくらくアップ グレードツール |
△ | △ | × | △ | ○ | ○ |
|
※Windows Autopilotでは、展開自体の失敗は発生する
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キッティングサービスの費用相場
気になるキッティングサービスの費用相場も、どのような手法を取るかによって大きく変わります。
例えば、都度キッティングでは、環境設定からアプリケーションのインストール、周辺機器との接続などをおこない1台あたり8,000円前後(富士ソフト調べ)が相場です。ただし、工程ごとに作業費用が設定されるケースもあるため、作業内容とあわせて確認しましょう。
また、マスターPCを作成した上で展開する場合、マスターPCの作成に数十万円かかる一方、1台あたりの単価は2,000円~3,000円程度に抑えることができるため、大量のPCをキッティングする場合には結果的にコストを抑えられるケースもあります。
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キッティングサービス選びの注意点
キッティングサービスによって提供形態やサービス内容は大きく異なりますが、何を基準に選べばよいのでしょうか?費用はもちろん1つの基準ですが、「安ければよい」というだけで選ぶのはリスクがあります。作業内容によっては、社内環境の情報を共有する必要もあるため、事業者としてどのようなセキュリティ対策を取っているのかは事前に確認したいポイントです。また、事業者側のスキルもチェックしたいところ。セキュリティ設定など、環境や事情にあわせて一歩踏み込んだ提案が可能かどうかを基準としてもよいでしょう。
もう1つ、気を付けたいのは、「PC管理で必要なのはキッティングだけではない」ということ。端末の調達(購入)からスタートし、社員に配布、運用を経て、最後は適切に廃棄するところまでライフサイクル全体の管理が求められます。キッティング作業をアウトソースするだけでよいのか、前後の工程も含めてどう管理するのか検討することをお勧めします。
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キッティングだけではなく、PCライフサイクル管理をトータルサポート
キッティングサービスは数多くありますが、なかにはPCライフサイクル管理全体をサポートするサービスもあります。富士ソフトでは、PCのライフサイクルをトータルにサポートする「デスクトップフルサービス」を提供しており、その一環としてキッティングにも対応。豊富な実績とノウハウをもとに、最適なキッティング方法を提案するとともに、必要な設定やセキュリティなどの設計もおこないます。
PCの運用管理では、業務にあった機種の選定・調達から、配布後の問い合わせ対応(ヘルプデスク業務)、Windowsアップデートなどの管理と、キッティング以外にも情報システム部門の負担は大きくなります。デスクトップフルサービスではこれらをワンストップでサポートし、PCライフサイクル管理全体を効率化。情報システム部門の負担軽減とあわせて、適切な管理によるコスト最適化・利便性向上につながります。